「たかが1円、されど1円」

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アップル  ●大学生 (22)

道端に1円が落ちている。
たまたまその1円が目に飛び込んできたあなた。
あなたなら、その1円を拾う?
それとも1円ぽっきりだから素通りしてしまう?
誰しも人生の中でこのような選択に追いやられたことは、一度や二度あるのではないか?
ねっとりとした雨が降る続け不快度指数120%であるような6月某日、私はこんな1日を本でも読んで切り抜けようと決意し、本屋へ向かった。
本屋で2冊の文庫本を買い、お会計は999円。
「オー999、スロットだったら良かったのに」なんてくだらないことを心の中で呟き1000円を出し“1円”のおつりを貰った。
その1円を財布にしまい出口に向かって歩いていると、私の背後で「チャリーン」という音がした。
振り返ると1円がまるでボウリングの球がピンをめがけて転がっていうかのように爆走していた。
そんな1円を見た瞬間、私は「おおっといけねー、さっきのおつりの1円落としてしまった」と思い、追跡モードに入った。
そして追跡開始とほぼ同時にある思いが私の頭にもたげた。
「あれってあたしの1円???だってさっき財布に入れたじゃん。
違うあたしのじゃない…(確信)」。
けれど、この確信があまりにも遅すぎた。
私の体はもう追跡体制に入っていたのだ。
腰を屈め、イナゴほどの1円を必死で追いかけていた。
けれど、この1円すごい速さで爆走中、中々捕獲に成功せず四苦八苦していた。
そんな私に不幸が襲った。
その日の私の服装、追跡モードにはいるとは思いもしなかった為、ローライズジーンズ。
履いたことのある人ならお分かりになると思うが、あまり深く腰をおろすことNG。
そんな理由で、私の追跡体制は完璧な追跡体制にはなっていなかった。
周囲に私の背中をさらしてはいけないと配慮型追跡体制になっていたのだ。
そんななまっちょろい追跡体制では、爆走中の1円を捕獲なぞ出来ない。
私はなんとおかしな追跡体制を維持出来ずに転倒してしまったのだ。
性格に再現すれば、まず膝が全体重を支えきれず、ギブアップ。
そしてその反動で上半身ギブアップ。
そんな私の情けない姿に同情か、それとも私のしつこい追跡に感服したのか、1円は爆走をやめ私の掌に捕獲された。
余談だが、この1円はその後に行ったコンビ二の支払いの時に大活躍したのである。
この1円が無かったら、私は万札を崩さなくてはならなかった。
たかが1円、されど1円なのである。大切にしなくてはならない。