「何を守る?」

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守備の人   ●会社員 (45)

これはあくまでも漫画の世界での話ではあるが。
題名は忘れてしまったが、鮮明に思い出す漫画のシーンがひとつある。
プロ野球を題材にした漫画であった。
ある守備?要員の選手が一人いたのだが、彼がある試合でスタメンを告げられた。
彼は喜び勇んで妻に観戦に来るように電話を入れた。
しかしその妻のもとには実家から父親が彼女を迎えに来ていたのだった。
そんなうだつの上がらない男なんか忘れろ、一緒に郷里に連れて帰るぞと言うのが父親の言い分だったのだった。
そんな折の彼からのスタメン出場の電話だった。
彼女は最後に彼の試合を応援したら郷里に帰るからと約束して父親と二人で球場に向かったのだった。
スタンドからはライトを守る彼の姿がはっきりと見えていた。
そんな時であった。
ライトに上がったボールは強風にあおられ、彼はそのボールを取りそこなったのだった。
それを見た父親は、守備要員がエラーをしてしまうようではお終いだと呆れ顔。
そのエラーがもとで相手チームに点が入ったのだ。
回は進んで、ノーアウト満塁の場面で彼の打順が回ってきたのだった。
当然のように監督がタイムをかけてきた。
父親はそれを見て、これで交代だなと言った瞬間だった。
監督は代打を告げることなく彼にそのまま打たせることに。
その時の彼と監督との会話の内容がなかなか泣かせるのである。

監督:前進守備の頭を越してみろ。
彼:えっ!交代(代打)ではないんですか?
監督:どうしてだ?
彼:僕は守備要員だし。
監督:守備要員なんて誰が決めたんだ?自分で守備要員と決める奴があるか!
彼:・・・?
監督:お前にはさっきのエラーの借りを返してもらわないとな。そんな会話が交わされたのだった。
守備要員がそのまま打席に立ったことで相手チームは前進守備を取ったのだった。
結果、見事内野手の頭を越しての逆転打となったのだった。
二塁ベース上で歓喜する彼の姿を見ながら、スタンドの彼女は彼は大選手にはなれないかも知れない。
でも彼と一緒に生きていきたいと。
それを聞いた父親は、母さんには父さんから事情を話して置くから・・・と。
そんな父と娘の会話があったのだった。
一方、監督の方は、常識どおりじゃ野球は面白くないもの。
これが野球というものさ。
そうつぶやいていたのだった。
この漫画を一度探してみたことがあるのだが作家も題名も分からずではそれ以上探しようがなかったのだった。
もしお分かりの方がいらっしゃればぜひ教えてほしいものであるけれど。
随分昔読んだ漫画のお話であった。