鉄棒

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昭和38年会  ●会社員(38) 

小学生のころから体育の時間は憂鬱だった。
何かと理由をつけてはその時間は休んだ。
最後には休む理由がなくなっていた。

中でも鉄棒は大の苦手だった。
苦手というより何もできなかった。
卑屈になっていった。

中学生になってからは、毎日昼休みに蹴上がりの練習をするようになった。
コツをつかみ出して蹴上がりができるようになった。
それでもまだ逆上がりは出来なかった。
ただ昼休みの鉄棒は続けていった。

高校生になって最初の体育の時間がきた。
苦手な鉄棒だった。
懸垂逆上がりをやらされた。
出来ないと思いながら、高い鉄棒に飛びついた。
その瞬間だった、出来ないと思っていたのに足が自然と持ち上がり、きれいな懸垂逆上がりの完成した瞬間だった。
何年越しだったろう。
心の中で何かが弾けていた、クラスのなかででもそれに気付いたやつはいなかった。