神宮球場における20世紀最終戦

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広島 太郎  ●会社員(52) 


タイトルは大袈裟であるが、要はカープの最終戦(当然相手はヤクルト)に出かけた。
目的は①カープの今年最後の戦いを応援したかったことと
   ②金本選手の3・3・3達成をこの目で確かめたかったことと
   ③達川監督の最後の指揮に拍手したかったこと
この3点であった。
先ず、球場切符売り場へ、うかつにも私は忘れていた。
当然ヤクルトにとっても最終戦である。
内野席は開放され、料金は一律。最終戦とはこんなプレゼントまで付いていることを。
切符を手にいざスタンドへ、そこでさらに驚いた。左翼スタンドは大観衆、これは感激にも近いものがあった。
私と同じような思いで、秋風が冷たさを一段と強めているこの球場に足を運んでいる人たちがいることを。
リーグ戦の順位はすでに決まってしまっている。
今年こそは優勝をと願っていた春先とは違い、最後までいい試合をして欲しいと願いはその内容を変えていた。
この東京でカープをこんなに愛している人たちがいる。そしてそのなかに自分もいる。
こんな気持ちは常に満員の観衆の中でしか応援したことのない人には分かろう筈もない。
カープのファンでいてよかったと思った一瞬でもあった。
今日の目玉はもちろん金本選手。
第一打席は凡退。
第二打席、応援する方がこの一試合でのホームランはさすがに厳しいとの思いが頭をかすめたその瞬間、金本選手が放ったボールが右翼スタンドに突き刺さった。
ものすごい歓声。
スタンドは優勝でもしたかのような喜び様。当然私の喉もすでにかすれてきていた。
ただこの場に居合わせた喜びをスタンド全体で共有できた瞬間である。
言い古されたことではあるが、野球にかぎらずスポーツの持つ良さをいやと言うほど知らされた一夜であった。
そして心のどこかで叫んでいた。
来年こそはカープの優勝を。
そしてまたこうやって神宮に足を運んでいる自分の姿を想像しながら、家路に着いた。