「メールアドレス」

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化石  ●会社員(45) 

ちょうど二年前になる。
大学時代の同期会の案内状が届いた。
この同期会は、最近5年に一回の割で行われてきた。
集まるのは固定メンバーの八人である。
卒業後30年近く経ってもなお同期とはいいものである。
今の社会的な地位とかがどうであれ、同期という括りでは人間関係は普遍である。
返信用の現況報告の欄に、今までにはなかった項目が追加されていた。
メールアドレス。
私はそのようなものを手にはしていなかった。
当然ブランクのまま送り返した。
全員の現況報告が一つにまとめられ再度送られてきた。
そしてそれに添えられた手紙のなかに、「化石」という文字が躍っていた。
私を指しての言葉である。
なぜならメールアドレスを持っていないのは私だけであったから。
「化石になっているのではないか」との同期のひとりからの心配の声がそこに書き綴られていた。
同期会まで一ヶ月半。
私のやることは決まっていた。
パソコンを購入し、そのメールアドレスとやらを取得すること。
思い立ったらもう止まらない。
追われる者のように、手配していった。無事同期会までには間に合った。
みんなの前で、その報告をした。
そしてこう付け加えた、「おかげで化石にはならなくてすみそうだ」と。
それから二年。
今ではプライベートに、仕事にと、この便利なメールは私にとって必要不可欠なものとなり、より広い「こころ」のつながりをも支え始めている。